アポロンの嘲笑

アポロンの嘲笑」中山七里
この人は、「蛙男」以来のファンなんだよね。途中、鴉と戦うみたいなエキセントリックな物もあったけど、今回は、大正解だったわ。
感じとしては、「逃亡者」と殺人事件を合わせたような感じ。従来の殺人事件がつまらない物が多くなっている中で、「逃亡者」の要素は飽きさせないで、新鮮だったわ。
まずは帯から。唯一無二の親友を殺した。東日本大震災の混乱の中で、起きた事件。逃走した容疑者が向かう先に隠された驚愕の真実とは。
さらに詳しく言うと。
東北大震災の5日後。福島の所轄の仁科の元に、殺人事件の情報が入った。金城純一が殺された。容疑者は、加瀬邦彦。純一の妹の婚約者。今日、純一が、反対をして、喧嘩になり、刺したらしい。
仁科は、邦彦に手錠をかけ連行する。だが、途中で、邦彦は手錠のまま逃走する。純一の家に戻り、話を聞くと、純一と邦彦は無二の親友だった。
仁科は足跡を追うが、川のそばで途切れていた。でも、原発の方向に向かっている。原発は事故を起こしたばかり。どういう事だ?
この後、原発へ放水するシーンがある。詳しいが、丸々どこかから捕ったような。ちょっと退屈。さて、仁科は、署へ戻る。すると、お決まりの警察庁のお偉いさんが出張ってきて、軋轢。こういうのもういい加減にしてもらえないかね。飽き飽きなんだよね。現実感を出すために仕方ないのだろうが、うんざり。
「富豪デカ(「謎解きはディナーの後で」もそだが)」みたいな胸のすくようなのを読みたいよね。まあ、仕方ないか。
すると、公安が出張ってきている。そして、金城家に盗聴器をしかけたりする。例によって、何も話してくれない。で、仕方なく、純一の過去を調べる。すると、昔、人を殺している。恋人を巡って、因縁をつけられた。
ここで、邦彦視点。これがいい。抜群。雪の中で逃げる。つぶれた工場がある。
そこでチェーンソウで手錠を切る。都合がいいような気もするが、まあいいでしょう。
で、仁科は、邦彦の雇い主を探す。5次までの孫請け。昔の住所を探す。S62年まで神戸。大震災で両親を亡くした。その後、叔父に育てられた。孫請けの会社へ行く。邦彦が事故で死にそうになった純一を助けた。それで、親友になった。
で、邦彦。空腹である。空になった家に潜り込む。原発で危険区域になった。電気もない。冷蔵庫の物はくさっていた。ハムだけを食べる。バーさんが出てくる。じーさんの帰りを待っているだとか。追い出される。イヌとハムを巡って争う。
仁科視点。神戸へ行く。邦彦の叔父に話を聴く。大した収穫はない。
邦彦視点。イヌと本格的な戦い。目つぶしをくらわす。イヌにかみつく。この辺、秀逸。勝が、寒い。歩いて、農機具置き場を見つける。寝る。
仁科視点。工場の隣の主婦に話を聴く。DVを受けていたらしい。
帰ってくると、邦彦が農家に侵入したとの情報。原発の近く。
公安のデカと喧嘩。公安は言う。3月11日以降の北朝鮮の債権市場に注目しろ。この債権がわからない。こんなの入れなくてもいいのに、と思う。この辺で、純一の口座に、架空の会社から入金があるとか、くらいでいいと思うけど。
邦彦視点。納屋が崩れる。下敷きになる。ようやく抜け出す。この辺も秀逸。阪神大震災を思い出す。畑の大根を掘って食べる。
仁科視点。原発建屋の内部をロボットが捜索して、映像を送ってくる。C−4爆弾がくくりつけられている。しかし、原発は事故で、放射能が撒かれているので、誰も近づけない。
邦彦視点。阪神大震災の思い出。繰り返しだし、長すぎて、(叔父に引き取られてからの辛い生活なども)、つまらない。福島の原発で事故になった純一を救い出すまで。長すぎる。
仁科視点。C−4爆弾の説明。
邦彦視点。純一の妹と親しくなるまで。
仁科視点。純一の過去を洗う。公安が怪しいと言ったから。昔、殺した男の兄にストーカーされていたことを掴む。そいつはテロリストらしい。
さらに、純一の口座に金を振り込んでいた架空の会社、北朝鮮のものだとつかむ。
さて、ここまでくれば、大体わかるよね。原発に爆弾=テロ。それをしかけたのは、北朝鮮の会社から金をもらっていた男。それを話を聞いたから、邦彦は純一を刺した、んじゃないか。で、邦彦はテロリストじゃないし。でも、放射能をたんまり浴びているから、今更原発建屋に入るのは、怖くないし。では、何をするべきか?そういう事。
しかし、事故の書劇で、時限爆弾は作動を初めている間に合うか?
感想。最初から脱走するつもりなら警察に電話するなよって話しhだよね。それに、わざわざ手錠をかけさせてから脱数するのも変。
それに、C−4爆弾が発発しても、すでに原子炉は事故で放射能を漏れさせているので同じ。
後から考えると、色々と不自然なことは多いが、まあ、いいでしょ。久しぶりに大きな事件を扱ったミステリーを読んだって感じだわ。大満足。
ノーベル文学賞がとりざたされているけど、こういう新しい概念を発明した人にこそ与えて欲しいわ。ミステリーは今まで与えられていないけど、私が該当すると思うものを上げてみるわ。まずは、アクロイドを発明したアガサクリスティね。それから、多重人格を発明したダニエル・キース。本格的にミステリーに昇華させた点では、今邑彩。どうも、私は、純文学は駄目なの。作文を読まされているみたいで。

みなさん、大阪へ文楽を見にいきましょう。年間観客10万人を割ると、大阪府からの補助金がカットされてしまうようになったの。橋本さんはなんで、文楽を嫌いなんでしょうねえ。世界に誇れる、日本の文化なのに。私も大好きなの。小説には必ず浄瑠璃を入れているの。でも、小説が採用されないから、悔しい思いをしているんだけど。どうか、大阪へ行って、文楽を見てください。修学旅行で、USJの帰りに文楽。婦人会の旅行で、USjの帰りに文楽。老人会で、有馬温泉の帰りに文楽。どうかひとつ、よろしく。