獏の檻

「獏の檻」道尾秀介
いやあ、文芸大作ですねえ。さすがに直木賞に道草していただけありますねえ。ミステリーにしては、毛色が変わっていて、面白かったですよ。
「ひまわりの咲かない夏」みたいなドンデン返しはないです。直球勝負ですねえ。愚直なまでの直球。獏というのは、悪夢を食べるあの獏です。その獏がタイトルに出てくるだけあって、悪夢が大きな部分を占めていますねえ。これからミステリーを書き始めようとする人には、マネしやすいかも。
「ひまわりの咲かない夏」はあまりにもカチッと出来上がりすぎていて、どうあがいても真似できないけど、こういう隙だらけの、脇の甘い作品は楽に真似ができますねえ。盗みまくりですねえ。機械的トリックが出尽くしちゃって、綾辻とかもう書いてないし、遺伝子操作も超最先端までいっちゃって、医学ものも専門用語ばかりで、超わかり憎い。そんな先詰まりのミステリー界で、今後を開いてくれるのは、こういう文学的な物なんじゃないかしら。新潮でも新しいミステリー大賞がでてき、それも、文学路線だし。で、筋。
私は、40台の離婚した夫。変な夢を見る。それは、蜘蛛になって、天井の隅から男女の営みを見下ろしているというもの。そして、部屋の隅の機織り機の陰には、女の夫と思われる男が潜んでいる。
いいですねえ。百年前の文芸小説みたいな感じで。レトロですねえ。夫は目の見えない妻を、別の男に売っているんです。直木賞の『苦役列車』ですねえ。
実は、私は、前にも書きましたが、多重人格の時代物を書いていて、それを、第二の人格という概念すら江戸時代にはない、と先生に言われて、捨てなきゃと思って、腐っていたんですよ。折角200枚まで書いたのに。
でも、この小説を読んで、「あ、妄想じゃなくて、夢にすればいいんだ」と気が付いたんですよ。あるいは、第一回新潮ミステリー大賞みたいに、小説の一部という形にするとか。嬉しかったですねえ。ぱっと目の前が明るくなったような。
で、筋ですが。32年前に父が村長さんを殺して、それに、この夢の女(夢の中では目が見えない)が、関わっていたようなんですよ。そして、32年後、私の目の前で、電車自殺するんですが、夢の中では、どうも、この女が村長を殺して、父にその罪をなすりつけたような、、。でも、よくわからない。とにかく、読んでみて。盗みまくりできますから。
 今週面白かったのは、財膳ナオミの。
A子のレストラン。河合我紋と仙田みつおが人質を取って籠城。仙田の冤罪に対し、B子の父に謝るように言う。でも、銃ももってないし、甘い籠城なんだけど。B子の父は、検察庁の長官。さらに、A子の父は道議会議員で、B子の父とも親しいので、A子の電話するように言う。A子は電話。で、三字、財膳の上司が入ってきて、謝って、簡単に解決。
さらに、この時、三時、C男の病院の裏に、三億円が置かれていた。C男はA子の父の議員に、ドクターヘリの補助金を頼んでいたが、そっけなくされてええいた。三億円の上に、「ドクターヘリの金に使ってください」と書いてあった。
さて、小樽の手稲山。D子の死体がみつかった。持ち物からD子が浮かぶ。D子は昔、A子の父の所で、秘書をしていて、失踪した。財膳は、三時に、河合が急に折れてきたことから、三億円の件と、籠城とは関係があると推理。D子の件と、籠城について、捜査。すると、D子は、C男とも親しかったことが判明。C男の証言。{D子はA子の父の議員の家にもぐりこんで、不正を見つけて、それをネタに三億円をゆすって、ドクターヘリの費用にする}と言っていた。
で、財膳は、捜査している途中で、A子の父にD子は殺されたのだろうと、推理。さらに、A子の父の家の近くを捜査すると、ある人が、A子と河合の一緒に写っている写真を見せてくれる。二人は知り合い。で、A子を問い詰める。すると告白。
「たまたm父がD子を殺す場面を見た。なので、ドクターヘリの費用の三億円を絞り取ることが、供養になると思って、今回の籠城を計画した」
電話を弟にし、弟が父に不正の資料をばらまかれるという脅しが来たと言って、三億円をねん出させた。ま、その後、河合が殺されるのだけど、これはご愛嬌。
なかなか面白かったわ。

追伸。先週、私名前間違えたかも。シリーポッターにでている顎の長い芸人が好き、まではあっているんだけど。名前が違うかも。思い出せない。とにかく、顎の長い男芸人。

書くことがないので、タカジンの本について書くわ。
タカジンの本が並んでいますねえ。奥さんが名誉回復のために書かせたような気がしないでもないのだけど、でもいいの。遺産を遊興費に使わないで、出版界のために使ってくれて。それに、タカジンは大好きだから。本屋にタカジンの本が並んでいるだけで、涙ちょちょぎれね。