スタート

3・6(金)
「スタート」小説、中山七里
まずは帯から。
伝説的映画監督の大森が新作、厄災の季節を撮る。若き助監督の宮藤栄一も現場に臨むが、軽薄なプロヅーサーや批判を繰り返す外部団体など、周囲には難敵ばかり。軋轢に抗いながらの映画作りが進む中、スタジオで予期せぬ事故が発生。暗雲立ち込める状況で、完成に漕ぎつけられるのか。映画への情熱と、どんでん返しの妙が織りなす、一気読み確実のミステリー。
もう少し詳しく。
中山七里は映画の脚本家でもやっていたのかね。映画のことにやたらに詳しい。それにしても、監督が一昔、古い時代をそのまま引きずっている人なんだよ。肺病で、今にも死にそうなのに、一日70本もたばこを吸っているような。そして、映画のことをホンペン、あるいはシャシンと呼ぶんだよ。ホンペン。いい響きだよね。
でも、今は、昔のように映画会社が自由に金を使わせてくれる時代じゃないんだよ。一社じゃ足りなくて、制作には、映画会社、テレビ局、ビデオ会社などが組んで政策委員会を作っているんだよ。で、次々と口を出してくるんだよ。まず、主人公は、第一助監督のはずだったのに、局が強引にチーフを入れてきたので、セカンドに格下げ。でもチーフは無能なので、雑用は全部セカンドに回ってくるんだよ。で、もっとひどいのが、主役クラスの女優を曲の看板女優でもって、アイドル上がりの女優を入れ込んでくるんだよ。これがまたへたくそ。でも、下手は下手なりに、叱られながら、頑張っているんだけどね。
で、撮影が進むうちに、次々と事件が起こるんだよ。まず、チーフの事故。チーフの助監督は、ビデオでNG集とか予告編を任されていたんだよ。で、ビデオモニターの位置は決まっているので、ある日、チーフの上に重いライトが落ちて大けがをするんだよ。それは、ライトのネジが4つとも緩んでいたんで、殺人未遂とhして、警察が乗り込んでくるんだよ。
で、捜査が行われながらも、撮影は続くんだよ。次は、精神異常者が犯罪を起こす話だったので、そっち方面のNPOが反対運動をして、乗り込んでくるんだよ。で、豚の臓物を見せて、いったんは撃退するんだけどね。
で、次は、今度は、主演女優の上に、フェイクに交じって、本物の角材が倒れてくるんだよ。主演女優は、大けが。これも犯人はわからない。そうこうしていると、吉崎というセカンドの助監督が殺されるんだよ。これは、主演女優のAVまがいのビデオがネットに流されて、それを流したのが吉崎だとわかったんで、恨みで殺されたと思われたんだ。
となると、犯人は、その主演女優じゃないかってことになるんだよ。となると、殺人犯の出ている映画は公開できないんだよ。この時点で、ほぼ撮影は終わっているんだよ。
さて、さて、どうする僕。おまけに、監督までが倒れてしまうんだよ。最後には驚きのドンデン返しがあるの。最後の最後まではらはらドキドキ。超面白かったわ。
内幕ものはいいよね。誰でも、若い頃の会社勤めの経験とかあるじゃない? 私も、小さな映画公開会社にいたけど、その時、ホモポルノの映画とか公開したの。あの時は面白かったわ。女性が大挙押し寄せてくれて。もちろんホモの人も見に来てくれて。それから、お堅い新聞社の内部にも隠れホモの人かいて、特集を組んでくれたりして。あのころの情報に、殺人事件なんかを絡ませたら、内幕ものは書けるわね。執筆意欲を書きたてられる作品だったわ。