ロスト・ケア

3・7(土)
「ロスト・ケア」小説。葉真中顕(光文社文庫
今回は、手紙形式で紹介。
最近小説が書けないとお嘆きの貴兄へ。今回は、実録ものです。日本ミステリー大賞新人賞受賞作です。500万ですよ。500万――。
ミステリーと銘打ってありますが、実際に取材して書いてあるので、トリックはありません。紹介文に、43人の痴呆老人を殺した戦後最悪の介護士、と書いてあります。私は、不幸にして、その事件は知りませんが、カリウムで4人の患者を殺した看護師も最近いました。それを膨らませて書いたのかもしれません。実録物は、ある程度は売れるので、需要があります。角田光代なんて、実録ものばっかで、直木賞です。「後妻業」という本も売れています。筆力のある皆さんですから、ちょっと戦後の未解決事件の資料でも集めたら、このくらいの小説はすぐに物することができると思います。筋立ては、5人の人間の過去や苦悩が順番に出てくるだけです。ぜひ読んで、参考にしてみてください。では筋。
第一章. 天国と地獄。
1・大友秀樹
大友の父をフォレストガーデン(3億円もする高級老人ほーむ)に連れてきた。入居予定。大友の友達の佐久間浩一郎が経営している。
2・羽田洋
シングルマザー。認知症の母を介護している。酷く認知症が進んでいて、暴力的、垂れ流し。それをベッドに縛り付け、夜のバイトに出る。息子は、そこの二階で寝せてくれる。
3・大友秀樹。
大友は佐久間とレストランへ。昔話をした。
4・「彼」
老女の静江(認知症がひどい)が夜一人でいる。ニコチン注射で殺した。盗聴器で、一人でいるのを確認した。盗聴器を回収。
5・羽田洋子。
朝、かえってくると、母が死んでいた。医者と警察へ連絡。病死と断定された。地獄が終わったと思った。
6・斯波操典
訪問入浴サービスをしている。羽田の家の老婆が死んだことを同僚と話題にしている。フォレスト・八がケアセンター所属。

第二章・きしむ音
1・大友秀樹(検事)
検視の現場にいた。殺されたのは関根。扼殺だった。古谷が逮捕された。彼は介護で関根宅に上がり、金がありそうなので、夜、再度来て、金を盗んだ。しかしそれを関根に見つかり、殴って逃げた。その後、誰かが扼殺した。首を絞めた犯人は左利き。古谷は右利き。扼殺した犯人も金を盗んだ。古谷はそいつをかばっている。と大友は推理。
大友が家に帰ると、フォレストガーデンの不正のニュースが流れた。
2・佐久間浩一郎。
大友と佐久間の過去。無人駅でキセルをしていた。それを大友は辞めさせようと
言った。大友は昔から、佐久間が鼻についていた。佐久間の回想。最初はもうかった。しかし介護法が改正されてから苦しくなった。それで、不正経理をした。
3・斯波操典。
介護法が改正されてから、散歩の付き添いはできなくなった。また一人、同僚が、苦しくて、辞めた。
4・大友秀樹
古谷を尋問していた。古谷は、同僚の坂をかばっていた。事件の全容がつかめたので、起訴状を書こうと思う。
5・佐久間浩一郎
過去。ケンが話しかけてくる。佐久間は経営が苦しいと打ち明ける。ケンは老人の個人情報を流してくれれば、かなりの金を払うと言う。ケンはそれをオレオレ詐欺に使う予定。佐久間は渡す決心をする。
6・「彼」
八加団地で、老人介護に苦しんでいる家を探す。一見の家を次の標的に決める。

第三章.ロスト。
1・大友秀樹(検事)
裁判。老女のタエが万引き。常習。懲役三年の刑。
ニュースでフォレストが厚生労働省によって処分され、介護の継続が不可能になったと知る。下部組織へ売却されるとか。
2・斯波操典。
斯波の介護の過去。テレビのニュース。フォレストがどこかへ売却されたら、そこで働くしかないと決心する。
3・佐久間浩一郎。
佐久間はケンと一緒になって、詐欺行為をしていた。渡したデータが役立って、今月はすでに300万も稼いでいる。
4・大友秀樹
坂の身柄確保に来ていた。身柄は確保した。その部屋にUSBが落ちていた。
5・「彼」
次の標的を八賀あさひ団地の緒方カズに決めて、ニコチンを抽出した。
6・斯波操典。
訪問介護センター(職員250人)へ石が投げ込まれた。上司の団が追い返してくれた。コピーキー(梅田宅)がこっそり作られているのを発見した。
7・佐久間浩一郎・
ケンから独立する決心をする。

第四章、ロングパス。
1・大友秀樹
県警の宮崎から電話あり。「佐久間浩一郎が殺された。犯人はケンという男で取り押さえてある」
2・斯波操典。
コピーされたのは梅田宅のキーだったので、梅田宅の前で、張り込み。そういえば、緒方カズも死にたいと言っていたと思い出す。犯人は来なかった。
3・「彼」
次のターゲットを殺す決心をする。これは悪ではない。人助けだ。
4・大友秀樹
先日押収したUSBの中を見た。フォレストガーデンの老人のデータだった。佐久間が流出させた物だ。佐久間はオレオレ詐欺をしていて同僚に殺されたと聞いた。となると、坂も一味か。
5・斯波操典。
上司の団が梅田老人のことをしつこく語ったことから、コピーキーを作った犯人hだ団だ、と推理。今日結構するかもと予想。
6・斯波操典。
梅田宅で張り込み。そこへ団がくる。団に鉄で殴られる。
7・大友秀樹
押収したUSBから、いろいろと検討。フォレストで死亡で退院した人、転院で退所した人をピックアップ。八賀ケアセンターで変死と届けでされている老人が異常に多いのを発見。#13の従業員が休みの日に変死者が異常に多い。#13とは誰?
8・「彼」
とっさに殺した人を車で運ぶ。

第五章黄金律
1・大友秀樹
県警の柊に#13のことを伝える。
2・「彼」
部屋に帰った。ノックされた。地検の検事で大友だった。
3・大友秀樹
「彼」を取り調べる。#13と断定。連行した。
「彼」は直に連続殺人を認めた。「彼」はさらに人を殺してしまったことも自白。相手は自分を殴った男。これは正当防衛。さて、#13は誰か? 団か、斯波か?