サナキの森

3・8(日)
「サナキの森」
今回も手紙形式で。
最近小説が書けないとお嘆きの貴兄へ。
今回はホラーと現代小説の合体です。まず、祖父の書いた擬古文のホラーがあって、それに挟まって、現代小説の謎解きがあります。でも、全然古さは感じないです。
第一回、新潮ミステリー大賞受賞作です。確か、100万です。
祖父の書いた擬古文が趣があって、超いいです。それにはさまる現代小説は、「せんせー」などと軽く書かれているように、ライトノベルくらい軽いです。一応ミステリーなので、密室の謎はありますが、簡単です。それより、ホラーの部分が横溝正史みたいで、超いいです。
筆力あるみなさん、昔書きかけで放っておいた小説はありませんか? それを、たとえば、兄の遺書作ということにして、そして、兄が自殺をしたとすれば、その謎をたどるという形にして、書き直すこともできます。あるいは、戦争中の父の体験の話だったら、それを、頼りに、戦後を生きる為に、父の友人を訪ねるという形にするのもいいでしょう。「永遠のゼロ」みたいですが。非常に参考になる作風なので、ぜひ、読んでみてください。
では筋。
私(紅)29歳。祖父が死んだ。祖父が「サナキの森」というホラー小説を残していた。遠野市の佐代村で起こった事件を題材にしてる。密室殺人が起こった。謎を解いてほしい。
「サナキの森」の一回目。紗代村には昔、冥婚という儀式があった。若くしてまだ未婚の男が死ぬと、その魂に若い娘を嫁がせる。部屋を閉め切って、何日も同じ布団で寝かせる。食事は下女が運び込む。主人公の女は一人、死んだ男の相手に選ばれた。ここまで。
現代の二回目。さて、紅は紗代村へ行く。赤鳥神社へ行く。征服姿の泪子と知り合う。泪子は祖母から鼈甲の髪留めをもらった。それは、荊庭零(紅の祖父)からもらったものだった。
せんせー(美術の教師)との出会いとか、主人公の過去。
「サナキの森」二回目。娘は、ある死んだ男の座敷へ閉じ込められた。
現代の三回目。泪子の話。昔、冥婚というのがあった。村の金持ちの息子が死んだ。そこをおばあちゃんはのぞき見したんだよ。泪子に「サナキの森」を読ませた。私の聞いた話とそっくりだ、という。
そして、「サナキの森」の三回目。お金持ちの家で、冥婚させられた娘が庭の離れで密室殺人させられていた。その娘を外から閉じ込めたのは次男。そして、カギはチャポンと井戸に捨てた。で、殺された後、井戸浚いをした。そしてカギを探しだして、離れを開けた。娘が刀で殺されていた。カギは一つしかない。さあ、謎を解いて。意外と簡単な謎。
現代の四回目。実際にあった密室殺人について(といっても、小説とそっくりなんだけど)、二人で考察。泪子の過去も。
「サナキの森」のおどろおどろしい雰囲気が超いい。魂が幽霊となって帰ってきて、冥婚させられた娘とまぐわう。じとーっとした雰囲気が超いい。トリックに行き詰って、先の見えないミステリー界に、新しい風を吹き込む意欲作です。

情報。
端麗なま。おいしそう。
GUM歯周病予防。