黄金色の祈り

7・22(水)
「黄金色の祈り」西澤保彦
これは自伝的な小説だわねえ。私もこの前、自伝的な小説を書いたけど、書いている本人にとってはものすごく楽しいの。懐かしいし。この中では、ビートルズソニー・ロリンズナベサダとかが出てくるんだけど、私も、オスピーとか淀川長春とかがバンバンでてきて、超懐かしかったわ。その分、懐かしさが先に立って、ミステリー色が薄れて残念。これは、短編を、自伝を加えて、長編にしたって、感じ。
筋。まず、中学の時に、ブラバン部のアルトサックスが盗まれるの。これは、A子が自費で買ったもの。そのすぐ後、僕のトランペットが盗まれるんだけど、これは、すぐ帰ってくるの。そして、数年後、高校、同じA子のアルトサックスが壊されて返されて(四年前に盗まれた者)新しいアルトサックスが(これもA子が自費で買ったもの)また盗まれるの。
そして、色々あって、数年後、それが天井裏に隠してあって、コーちゃんが横で死んでいるのが発見されるの。
最初は、5寸くぎが飛び出していて、転んで、そこに喉が尽きささって、いたので、事故死と思われるの。でも、なんで、アルトサックスが中学の天井裏にあるのを知っていたのかと考えると、コーちゃんが盗んで置いたと考えるのは変。なぜなら、コーちゃんは、中学の時から、ブラバン部の中では天才で、高校でも、天才で、卒業後は、シャープス&フラッシュで大活躍していたのだから。
それで、当時、A子の付き合っていた男とか、女とか(A子は両刀だった)が、振られて、仕返しに盗んだとか、色々憶測が出たの。
で、もう忘れた頃になって、コーちゃんに知らせて、コーちゃんは撮りに行って、事故死。
で、ここで、私の自伝的な小説なので、その間に、私は、アメリカ留学して、TSエリオットに感銘を受け、初めて女の子とセックスし、あるいは、このアルトサックス紛失事件をミステリー仕立てにして、小説を書いて、応募してと、色々あるの。
で、数十年後、先輩と話していて、自分が犯人だと白状。(ま、それ以外では、全然面白くないんで、当然、そう行くんだけど)その時は、アメリカに行っていたので、トリックをいろいろと披露する。面白くもないんだけど。
でも、こういう自伝的な小説を経て、「森奈津子の不思議な事件」みたいな、滅茶苦茶ボーイズ・ラブな作品が生まれたのだと思うと、感銘深いわ。振り切ったのよ。そういう意味では記念碑的な作品。

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